以前、「中堅・中小企業の経営者・開発責任者対象」ものづくり企業の製品開発と知的財産の在り方というテーマでセミナーを行ったことがあります。
 なぜ、このテーマにしたかというと、これまで多くの企業担当者とお付き合いしてきた中で、やるべきことを気づかず、或いは知らずに、商品開発を進める企業があまりにも多かったからです。
 私と直接お付き合いして頂いていた企業の担当者には、打ち合わせという僅かな時間ではありますが、検討ができていないことや、どのように検討すべきかといった、落とし込みまでアドバイスや支援をしていました。
 この僅かな時間でのアドバイスや支援で、担当者のレベルアップを図れたかというと、人さまざまで、思っていた以上のレベルに到達した人もいれば、一度お伝えしたアドバイスを次回にも、さらに次回にもと、同じアドバイスを繰り返してもレベルアップせず、改善案をこちらから提示しなければならない担当者もおられました。

 この違いは、体験や取得した知識・知見を次に活かそうという、本人の意識レベルの違いが大きいようで、レベルアップする担当者は、体験や取得した知識・知見を社内(他の担当者)にフィードバックしているようで、組織全体もレベルアップしていたように思います。これに対し、改善策をこちらから提示させて頂いた担当者は、それを持ち帰り、その改善策で商品化を進めてしまう傾向にあります。

 このような状況もあり、担当者を管理監督される責任者や経営者に現場での状況(外部とのやり取りの状況等)を認識或いは気づいて頂き、自社の商品開発でやるべきことができているのかを認識して貰う必要をあると考え、セミナーの参加対象者を「経営者・開発責任者対象」としました。
 また、大企業は別として、中堅・中小企業は、経営資源にも限りがあるため、担当者があれもこれもやることが多く、これを効率的に(仕事の負担を減らして)商品開発をでき、商品開発に投入する資金の無駄遣いを少なくすることを意識してもらうためにも、「中堅・中小企業」を対象にしました。

 このような思いを込めて参加者を募集したところ、アッという間に満員御礼となりました。この状況を見て、経営者や責任者も、現状に何かしらの問題があると感じておられ、改善するヒントを求められているのだと… 
 これもあり、セミナー当日にはお役に立てる情報を提供できればと、資料作成にも力が入りました。

 セミナー当日、会場は欠席者もなく満員です。その中には、繰り返しのアドバイスをしている担当者が所属する企業の経営者や開発責任者の顔もあります。

 ちょっと緊張しながらセミナーを開始。

 まず、内容に入る前に、雑談を交えながら参加者の意識を確認しました。
 「ご参加の皆さんの
会社では、商品開発は上手くいっていますか?」
 「商品開発が上手くいっていると思われる方は、挙手をお願いします!」
 
 問題意識のある方に参加して頂いているので、挙手される方は少ないはず…

 えっ!

 9割程度の参加者が挙手されています。

 表現が悪かったのかな?言い方を変えて…

 「ご参加の皆さんの開発された商品は、その商品の魅力で売れていますか?」
 「商品の魅力で売れている思われる方は、挙手をお願いします!」

 相変わらず、9割程度の参加者が挙手されています。
 もう一度、表現を変えて…

 「ご参加の皆さんの開発された商品、商品の開発は、企業の利益に貢献していますか?」
 「貢献していると思われる方は、挙手をお願いします!」
  またまた、9割程度の参加者が挙手されています。
  
  これを見て愕然とし、途中退席されることを覚悟しつつ、
 「じゃあ、今日ご参加いただいた皆様にとって、今日のセミナーは必要のない内容かもしれませんね。お時間を無駄にするかもしれませんが、お時間のある方は、確認と思ってお付き合いください。」といって、準備した内容について説明を進めました。

  セミナーは、途中退席者もなく、予定通り進み、質疑応答へと

  質疑を終え、「参考になりました!」という、当たり障りのないコメントを言われる方もおられれば、「私どもはセミナーで説明のあった通りやっているので、これでよいと確認できました。」と言われる方など、さまざまです。

 しかし、「私どもはセミナーで説明のあった通りやっているので」と言われた経営者や開発責任者の所属する企業は、先にある「繰り返しいっても改善できない担当者」が所属している企業…

 担当者に任せきって現場の状況が把握できていないのか…

 魅力のある商品だけを作っても売れないと言われている通り、商品が売れるには、商品の売り方が影響していることを理解していない…
 売れているから商品の魅力が伝わっている、だから商品開発も上手くいっていると…
 ちがいますよ!
 外部から提供された改善策で商品化してるのだから、
 商品開発は上手くいっていません!
 また、短時間の打ち合わせで提供した改善策は、綿密な検討もできていないので、それでも売れているということは、商品の無力ではなく、販売力で売れているのかもしれないでしょ!

 と心の中でですが、叫んでいました。

 新人や若手社員であれば、組織に染まっていない場合や多いため、時間をかけて教育すれば、素直に受け止めて改善できることもあるでしょう。
 しかし、経営者や責任者、特に勤続年数の長い人は、その企業の社風等に染まっているため、現実を認め難い傾向があり、「井の中の蛙」になっていることが多いです。

 これは、このセミナーのとき以外にも、コンサルタントとして経営者の方に対して営業したり支援したりしているときにも感じていたことです。「ここをこうした方が…」というと、「そうだね」というだけで、次に進まないことも多々ありました。

 現状を変えたくないという気持ちは判らないことはありませんが、状況を変えない、問題を見て見ぬふりをすると、いうことは、単に楽な環境を保とうとしているだけです。
 市場の状況が刻々と変わる現代において、経営者や管理者は、今ある状況を捨てる覚悟を持ち、自らが意識的に本質的な課題問題に目を向けない限り発展はないことを意識し、内部や外部からの発信に耳を傾けることが必要ではないでしょうか。

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