ある展示会で、公的機関の相談員もされている中小企業診断士の先生とお会いする機会がありました。
その先生とは初見ということもあり、ご挨拶程度で立ち去ろうとしたところ、
先生からの質問です。
「お仕事は何をされているのですか?」

営業しようとしてるのかな?
と思いつつ、
「経営資源に限りのある中小企業を対象に、…」
と言いかけたとき、
何やら中小企業診断士の先生の顔が微妙に怖い顔に。

「競合か!」とでも思われたのでしょう。

気にせず、話を続け、
「商品の企画・開発の支援をさせて頂いています。」
というと、中小企業診断士の先生の顔がまた一変し、今度は微妙に笑顔になった気が…
すると、先生から、
「なぜ、中小企業を対象に商品の企画・開発をしようと…」

これに対し、私は、
「前職は特許事務所の所員で、新商品やアイデアの権利化をお手伝いしていたのですが、
お客様と打ち合わせを進めると、結構な割合で、ミスや見落としが見つかり、
販売直前の商品の見直しや、開発自体のやり直しを余儀なくされる企業が多かったので、
客観的にものごとを見れる立場として、内部ではなく、外部からのアドバイス等を行った方がよいと考えまして」と答えました。

すると、先生は、
「そうなんですよ。中小企業診断士は、企業の経営分析や指導をしているのですが、新商品の開発が進まない企業が多いんですよ。
また、経営改善案の一つとして、新商品開発や、新規事業を薦めることもあるのですが、上手くいかない企業も多くて…
他の中小企業診断士の先生には、新商品開発や新規事業を指導できる方も居られるかも
しれませんが、私の周りには、一般論で指導やアドバイスできても、マーケティングや、技術的なこと、アイデア出し、ものづくり等、事案に即した具体的な指導やアドバイスをできる人はいなくて…。商品開発を推奨しているプロの立場上、商品の企画開発の踏み込んだアドバイスはできないとも言いにくいですし、特に、小規模事業者や中小企業は、経営資源にも限りがあるので、大企業でやるようなことも言えませんし…。」と。

プロ意識が強すぎて、強引にことを進める人もいる中で、
この先生は、プロとして企業に「できない」とは言いにくいと言いながらも、踏み込めない領域を理解されており、その踏み込めない領域について、初見の私に打ち明けることのできる素直な方で、信用できる素敵な方だという印象を覚えました。
商品の企画・開発の手法等は、色々あり、このケースで成功しても、別のケースで必ず成功するといった保障はありません。
できるだけ失敗しないためにも、根拠もなく、知ったかぶりで「私はプロ!これをやれば必ず成功します!」と強引に推し進める外部支援者よりも、知らないことは「知らない」、できないことは「できない」とはっきり言え、知らないことは勉強しつつ、自分のもっている知識や知恵を最大限に活用しながら、企業と一緒に考える外部支援者の方が良いのではないでしょうか。

これは中小企業診断士に限った話ではなく、企業に対して外部から関わる(支援する)業界すべてに言えることだと思います。利害関係もありますし、その人(先生)がどのような方かを見抜くことは難しいと思います。かといって、敬遠するのではなく、簡単な相談から始めてみて、一度付き合ってから判断してもよいのではないでしょうか。

また、限られた経営資源の中で費用を捻出して支援を求めている企業に対する外部支援は、支援を求める企業のためにも、欲張らず、踏み込めない領域を理解した上で支援できる専門分野に特化し、分業、或いはタイアップすることで企業を支援をする動きになれば、より良い支援になるように思いました。

プロ意識という点においては、ものづくり企業においても同じでが、プロ意識の強い企業(これまでやってきたという自負のある企業)ほど、外部の支援を拒絶する傾向にあります。
外部の支援を受け入れることは、客観的なものごとの判断や、新たな知見も得る絶好の機会です。

私自身、多くの経験から多くの知見や知識を得てきた!多くの難題と向き合って解決してきた!と自負していましたが、事業を運営するという環境に変わった変わったこともあり、自分の関わった業界や環境以外の方々から支援を受ることで、認識していたこと以外の問題に気づくことができたり、アイデアを頂いたりしています。一組織、特に、その組織に属する一個人が知りえた知識や知見は、世の中のごく一部です。

これまで順調に経営を進められてきた企業であっても、問題意識を持ち、気づきを与えてくれる外部の支援者(アドバイザイー)や、自社のことを一緒に考えてくれる外部の支援者(アドバイザー)を見つけ、外部の力(支援)を取り入れることをご一考されてはどうでしょうか。