私が社会人になった30年前、情報収集は足で稼ぐことが主流でしたが、
今では、ネット経由で色々な情報を入手できる時代になり、非常に便利な時代になりました。
しかし、その業界でプロとして活動している人にしてみれば、?と思うような情報や、誤解を招いているような情報が少なくありません。

今日は、あるyoutube動画を見ていて、これは誤解を招くんじゃないかなと思うような投稿があったので、これについて書きたいと思います。またまた、知財の話になりますが…
その動画は、「実用新案権と意匠権を合わせて取得すれば、ビジネスにとって協力な武器になる!」という、ざっくりとした内容です。

この内容は、知財業界で言われる所謂「知財ミックス」の話をされています。
確かに、実用新案権も意匠権も特許権と同様に独占排他権であり、これらを上手く組み合わせれば、保護できない部分を補填できるため、自社にとっても有効なものになることもあります。
この前提として、それぞれの権利が有効なものであることが必要です。
(youtubeの動画では、そのことは一切触れておらず、取れればOKのような内容になっていました)

一般的に、特許は大発明(発明)、実用新案は、小発明(考案)を保護するもので、大発明や小発明に対しての評価として、新規性及び進歩性が判断され、新規性及び進歩性のあるものに権利が与えられることになります。

この評価の違いとして、進歩性の判断とされています。

特許(大発明)では、公知技術から容易に考えつくものであれば、進歩性なしと判断されます。これに対し、実用新案(小発明)では、公知技術からきわめて容易に考えつくものであれば、進歩性なしと判断されます。
しかし、実務上、新規性や進歩性の判断を行う場合、特許も実用新案も差はないといっても過言ではありません。すなわち、「容易」と「きわめて容易」との境界が明確ではなく、結果的に同じような判断が行われます。

「実用新案は、通りやすい」と言われる方がおられます。
実用新案は、基本的に出願すれば立派な登録証を手にすることができますが、これは、考案(小発明)の審査はされず、新規性や進歩性を判断されていないからです。
実用新案では、技術評価制度が導入されており、登録後(権利になったあと)、特許庁に技術評価を請求して内容の評価をしてもらわなければ、権利の有効性についてのお墨付きはないということになります。

特許と実用新案の手続きや処理の流れが異なります。特許の場合、特許庁の審査官の審査の結果、新規性や進歩性がないとされた場合、「特許請求の範囲(権利を請求する範囲)」等を補正をすることができ、新規性や進歩性がないと判断されな内容から、新規性や進歩性があると判断される内容にできるチャンスがあります。

これに対し、実用新案については、補正ができる期間が非常に短く、内容に不備があることに気づくことができない場合が殆どであり、実務上、補正のできる期間はないといっても過言ではありません。

では、どのようにすれば良いでしょうか。

実用新案の場合、補正ができないと考えれば、出願当初から「実用新案登録請求の範囲」の「請求項」を多く作って必要があります。すなわち、概念的に広い内容のものだけでなく、内容に限定を加えて概念的に狭いものをできるだけ多く作っておく必要があります。
このようにしておけば、概念的に広い内容に対して、新規性や進歩性がないと判断されたとしても、概念的に狭い内容を記載した「請求項」は、新規性・進歩性ありとされ、この部分に対しては有効な権利として残すことができる可能性が高まります。

しかし、J-Platpat(知財に関連する公報のデータベース)を見てみますと、実用新案であるにも関わらず、請求項の数が非常に少なく、ひどいものであると、たった一つしかないものも少なくありません。その中には、特許事務所(弁理士)が代理人として出願しているものもあります。

これでは、登録証が発行されていたとしても、請求項の内容に対して新規性や進歩性がないということが判れば、全くビジネスに貢献しないものになります。
従って、実用新案で権利化を試みる場合、請求項の数をできるだけ多くつくることをお勧めします。
しかし、請求項の数を多くすれば、その分、費用が高くなります。また、技術評価請求をする場合、特許の審査請求費用と同じような費用が発生します。また、実用新案から特許出願することもできますが、色々な制約や費用の問題もあります。
従いまして、企業にとって、メリット、デメリットを総合的に考え、出願の種類を考える必要があります。


また、youtubeでは、技術評価請求をしなければ、有効なものか判らないため、実用新案登録出願をしておけば第三者に対するけん制になると言われていました。
しかし、実用新案は、権利の内容として確定しているため、その確定している内容を確認すれば、ある程度は有効なものかどうかはわかります。特許の未公開の状態や、権利の内容が確定していない出願状態のように、権利化の方向性が判らないという状態とは異なります。

従って、自社にとって邪魔になりそうな実用新案があれば、先行技術の調査は必要になりますが、プロの弁理士に有効性を確認して貰うことで、100%の判断が得られるものではありませんが、有効なものかどうかはわかります。


実務者やプロから見れば、誤った情報や誤解を招く情報、不足した情報が散見されますので、面倒くさいと思わずに、ビジネス等に影響するような内容は、一度自分で確かめてみること、或いは、プロに聞いてみるということを心がける必要があると思います。

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