特許権や意匠権等の知的財産権は、独占排他権と言われ、権利者は、権利の範囲内において、第三者の製造・販売等を排除して商品を独占的に製造・販売等を行うことができます。

この点については、知的財産権を取得するメリットとして多くの方がご存じだと思います。


しかし、知的財産権を取得したからと言って、国内の市場を独占している状態になるとは限りません

上記の通り、知的財産権を取得すると、第三者の実施(製造・販売)を排除することができ、権利者だけが権利の範囲内において、商品を製造販売することができます。
しかし、権利者の販売力や生産力が十分でない場合、日本市場全体(全国)に商品を供給できず、結果的に、権利者が商品を供給できるエリアや業界等のみを独占している状態になります。

特に、中小・零細企業の場合、日本全国を網羅できるほどの生産能力がなく、販売チャネルも限られていることが少なくありません。

例えば、マスクの市場を見てみますと、コロナ禍になってから大手家電メーカーや大手自動車メーカー等を含め多くのメーカーがマスクの生産を始め、品不足も解消されるようになりました。
これまでマスクの多くが海外からの輸入されていたことも踏まえますと、マスクの市場は、1社が独占的に製造・販売できない巨大市場と言えます。

では、生産力が十分でなかったり、販売チャネルに限りがある中小・零細企業が、巨大市場となる「マスク」について基本的な権利を取得していた場合(今となっては基本的な権利は取得できませんが)、独占的に製造・販売ができるでしょうか。

答えは、お判りの通り、自社の製造・販売できる範囲だけを独占している状況になり、その他については、第三者を排除しているものの、実質的には「空き地」になってしまいます。

これまで、多くの企業の経営者の方々とお会いする機会がありましたが、殆どの場合、「独占」のみを意識されています。仮に、他社に製造・販売を許諾するライセンスという話があっても、具体的なイメージのない状況が殆どで、「空き地」がどのような条件でできるのか、「空き地」をどのように埋めるのか等について言及される経営者や知財担当者とお会いする機会がなかったように思います。

経営資源が潤沢にある大企業であれば、生産力や販売力もあるため、このようなことを議論する必要はないのかもしれませんが、中小・零細企業の場合は、せっかく取得した権利を自社の利益貢献に有効に活用するには、「空き地」を意識する必要があると思います。すなわち、中小・零細企業は、他社の協力を得るというスタンスをもつことも重要だと思います。
この他社の協力とは、権利者(自社)で不足している生産力の補填や、権利者(自社)と繋がりのない業界や市場、業者とつながりのある企業の協力です。

他社の協力を得るというと、外注や下請け的なことをイメージされますが、この場合には、「空き地」に強い企業に製造・販売を任せるということです。任せるといっても、手放しで任せるということではありません。きちんと報酬を得ながら任せるということです。

これに活用できる権利としては、知的財産権に基づく専用実施権や通常実施権があります。
専用実施権については、設定した範囲について、専用実施権者が独占排他的に製造・販売ができるようになります。そのため、専用実施権を設定した場合の実施料(ロイヤルティ)は、独占権のない通常実施権を許諾する場合の実施料(ロイヤルティ)よりも高額になる傾向にあると思いますが、専用実施権を設定してしまうと、特許権者等の権利者そのものが実施できなくなる場合もあり、また、専用実施権の生産力・販売力の範囲でしか商品を普及できなくなる可能性もあります。
従って、中小・零細企業の経営者は、状況にもよりますが、自社の商品だけでなく、自社のアイデア・技術力を広く知らしめ、それに合わせて実施料を獲得するために、通常実施権をメインに検討されてはいかがでしょうか。
但し、専用実施権や通常実施権の許諾を求める企業は、当然に利益が得られること前提としているため、特許権等の知的財産権に基づいて商品を製造・販売した場合に、その商品が市場に認められる(売れる)ということが前提となります。
従いまして、これまでも述べてきましたが、商品づくり及び権利づくりは、市場を見据えて行うこと、第三者にやらして欲しいといって貰えるようにすることが重要です。すなわち、商品づくりも権利づくりもマーケティングが重要です。

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