前職で商品開発コンサルタントとして、中小企業の商品開発の支援に併せ、営業活動もしていました。
商品開発は、ものづくり企業の根幹ともいえるため、営業活動の対象は、企業の経営者クラスの方々です。
この営業活動において、経営者に対し、現状の商品開発の状況や開発の成果としての権利取得の状況等をお伺いし、問題がある場合には、改善提案をすることになります。

問題があると思われる企業の経営者には、自社の商品開発に問題があることを既に理解されている方も居られますが、自社の商品開発に問題はないと思っておられる方も居られます。

「自社の商品開発に問題があることを既に理解されている経営者」の方は、問題意識があるため、改善についての話になりますが、「自社の商品開発に問題はないと思っておられる経営者」は、説明しても理解しようとされません。

この「自社の商品開発に問題はないと思っておられる経営者」が経営されている企業の商品開発の傾向として、先行商品に対して機能追加(プラスα)することのみが商品開発であると思われている傾向が強いように思います。

すなわち、ベースとなる商品に機能追加(プラスα)するに併せ、新たに生まれる問題を改善することを置き去りにしている商品開発をされていることが多いように思います。

例えば、ハンドマイクを自社のメイン商品とされ、これをベースに商品開発をされている企業での話ですが、スマホの普及に伴い、ベースとなるハンドマイクにスマホを取り付けるためのホルダー(スマホホルダー)を付加したハンドマイクを開発したと言われたことがあります。
ハンドマイクの市場において、スマホを保持できるようにして欲しいというニーズがあれば、それは立派な商品開発と言えるかもしれませんが、話を聞くと、十分なマーケットリサーチをされておらず、自社(二代目社長)の発想によって開発された、いわゆるプロダクトアウト的な商品開発です。
しかも、この商品開発は、先行商品であるハンドマイクに、一般的に普及している機能(スマホを保持する機構)を追加したに過ぎないもので、ウェイトバランスが崩れてしまっています。
ようは、もともと使いやすさを追求されていたベースとなるハンドマイクの使いやすさ、扱いやすさを無くしてしまっています。

しかし、二代目社長は、自慢の新商品だと言われるため、それ以上、ダメ出しもできず、さっさと退散しました。

特許事務所時代に持ち込まれた新商品も同じケースがたくさんありました。
私がお付き合いしていたお客様には、容赦なくダメ出しするとともに、改善すべき点や改善案(アイデア)を提案し、見直しをしてもらうようにしていました。

決して、機能追加(プラスα)の商品開発が悪いと言っているのではなく、機能追加(プラスα)をする場合、機能追加(プラスα)に伴って生まれる新たな問題・課題を見つけ、その新たな問題・課題の対策をしてこそ真の商品開発ではないかということです。すなわち、新たな問題・課題の対策が他社との差別化をした商品開発になるということです。

このように新たな問題・課題の対策をすると、この対策(機能や構造)で特許も取得しやすくなり、また、他社参入を阻止できる可能性も高まります。

例えば、他社が同じような新商品を開発しようとしたとき、同じように新たな問題・課題に直面します。
この新たな問題・課題の対策をしなければ機能面等で劣ることになりため、他社も新たな問題・課題の対策をとろうとすることになりますが、新たな問題・課題の対策で特許を取得していれば、他社は、自社の新商品よりも劣るものを市場に出すか、新たな方策を検討することになり、最悪の場合、市場に投入できなくなることもあり得ます。

ここでは、機能追加(プラスα)について取り上げましたが、機能の置き換え(置換)による商品開発等も同様で、機能の置き換え等に伴って新たに生まれる新たな問題・課題を見つけ、その新たな問題・課題の対策をしてこそ他社差別化を意識した真の商品開発です。

ぜひ、自社の商品開発が一歩踏み込んだ検討をしているか確認してみてはどうでしょうか。
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