先日、新規事業を計画されている企業経営者と面談する機会がありました。
その企業経営者によれば、新規事業には、基礎となる技術(大学の教授が研究され、理論的に確立されている(必要なエビデンスが揃っている技術))を利用した商品が必要であり、この技術をベースに商品開発をすれば、さほど商品化することは難しくなく、社会的に信用のある(大学の研究で裏付けされた)商品になるとのことです。

確かに、大学の研究で必要なエビデンスが揃っていれば、社会的に信用のある商品になると思います。

しかし、この企業経営者の方は、商品化を安易に判断されています。
すなわち、商品化の壁、スケールアップの壁があり、場合によっては、開発が長期化して経営を圧迫する可能性があることを認識されていません。

大学の研究は、ラボレベルのものが殆どで、例えば、商品化する際にスケールアップしなければならないことが殆どです。また、大学での研究は、自らが設定した条件での研究が多く、商品化で要求される「実際の条件」での研究をされていないことがあります。

基礎の技術を基にスケールアップする場合、研究結果を同じ結果が得られる装置になる場合もありますが、基礎の技術と同じ結果が得られない場合が非常に多く、多くのメーカーが苦戦されるところです。また、上述の如く、基礎の技術(研究)の条件と「実際の条件」とが異なるため、これによっても、基礎の技術と同じ結果が得られない場合が非常に多く、多くのメーカーが苦戦されるところです。

私は、メーカー時代、廃棄物の処理装置の開発を担当していました。
その処理装置の基礎となる技術は大学等の研究で確立されており、ラボレベルの装置は存在していました。
それを基にスケールアップを図ろうとしましたが、ラボレベルで処理されていたもの(単一の素材)と、実際の処理の対象となった廃棄物(複合的な素材)とは、性状や組成が全く異なり、ラボレベルの結果とはかけ離れた結果になりました。
また、単純に(比例的)に装置をスケールアップさせると、処理中の素材(廃棄物)の挙動がラボレベルとは全く異なり、これによってもラボレベルの結果とはかけ離れた結果になりました。

そのため、「実際の条件」及び「実際のスケール」で最適な状態となる条件を見つけ出すために、何トン、何十トンもの廃棄物の組成分析を繰り返しながら、機器の構造についても試行錯誤を繰り返しました。その結果、処理機の開発は、3年ほどかかってしまいました。

このようなケースは、化学処理装置や化学プラント等の開発でもよくあるケースです。

他社が目を付けていない技術があり、それを基に商品化すれば、市場で一人勝ちできるかもしれません。
しかし、基礎となる技術(大学等で研究によって確立された技術)があるからといって、必ずしも商品開発がスムーズにいくとは限りません。
このような場合、自社の体力(人的な体力、金銭的な体力)を踏まえ、開発の着手の有無を考える必要があります。

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