4月5日に韓国LGがスマホ事業の撤退を発表しました。
4月5日付の日経新聞の記事には、
「…外部への技術流出を懸念して売却を断念した。…
コスト削減を進めたが、黒字化の道筋が見えなかった。事業を売却すれば自社のスマホ関連の特許が外部企業に渡ってしまうという懸念もあり、事業停止を決めた。」とありました。

この記事を読んで、
スマホ事業に関する技術であっても他の用途・事業に活用できる技術が存在することを踏まえれば、前段は納得です。

しかし、後半の記事を見て「?」と感じたのは、私だけでしょうか?

上記記事の後半は部分は、事業停止の理由として、特許が外部企業に渡ること阻止したいという書きぶりです。事業停止は、あくまでも黒字化の道筋が見えないからです。ひょっとして、事業「売却」停止といいかったのかも…。

それはそれとして、この記事の内容にある、事業売却時に外部流出を阻止しなければならない技術と、
事業売却時の特許等の移転(譲渡)にいう点について書いてみたいと思います。

特許や実用新案が権利になると、特許公報等が発行され、その権利の内容が公開されます。また、特許の場合、権利になる前に出願公開公報が発行され、これによっても技術の内容は公開されます。

従って、既に内容が公開されている特許等の権利の譲渡(移転)が、直接的な技術流出ということにはつながりません。

ここで、外部流出を阻止しなければならない技術(本来の技術)は、
一般的に「ノウハウ」とされるものです。
上述の如く、特許や実用新案で権利化を図る場合、内容が公開されてしまうため、自社の事業で重要な技術的な事項等であって、
第三者が推測等のできない事項は、権利化を図るのではなく、「ノウハウ」とする必要があります。
しかし、「ノウハウ」について、あまり深く考えずに、第三者が推測できることや、比較的容易に思いつくこと等も「ノウハウ」だとされる方が少なくありません。
このような内容は、自社において「ノウハウ」だとして秘密にしていることが多い(一般に公開されていない:非公知)ため、第三者が特許や実用新案で権利化してしまう可能性もあります。
従って、「ノウハウ」にする価値があるか否かについて、内容を吟味する必要があります。なお、第三者が権利化を図った場合、その出願よりも先に実施していれば先使用権を主張できる場合もありますが、独占権は第三者が有するため、利益獲得の機会を損失してしまうことになります。

さらに「ノウハウ」についていえば、「ノウハウ」は、不正競争防止法における営業秘密に該当し、このノウハウが流出した場合、不正競争防止法での対応となります。
この場合、「ノウハウ」であると認定されるには、管理状態等の数々の要件がありますが、多くの企業では、その要件を満たさない状態で、
「ノウハウ」としている情報を取り扱っている場合も少なくありません。従って、「ノウハウ」とする場合には、情報管理等に注意すべきです。

上述の如く、事業を売却する場合、その事業に関連する「ノウハウ」も提供しなければならないことがあります。その点を踏まえれば、複数の事業を有する企業全体の「ノウハウ」として管理せずに、技術毎に切り分けた事業単位での「ノウハウ」として管理することが好ましいように思います。このようにしておけば、売却の対象とならない事業に関連する「ノウハウ」が芋釣り式で引き出されてしまうことも予防できる可能性があります。


特許等の知財については、事業売却をする場合、その事業に関連する特許等の知的財産権を事業の売却先に譲渡しなければ、事業を買い取った企業は、その事業をすることができません。そのため、通常、事業を売却する場合、その事業に関連する知的財産権をセット売りすることになります。

しかし、特許や実用新案権等の場合、売却する事業以外の事業に跨る技術に関連するものもあります。
このような場合、売却する事業に関連する権利をリストアップし、それらを全てセット売りしてしまうと、売却の対象外とする事業の継続ができなくなる場合があります。
そのため、このような場合、自社の権利の内容がどのようなものか(複数の事業に跨る内容か否か)をしっかり確認し、売却する事業とそれ以外の事業に関連する権利については、自社と事業の売却先との共有の権利にする等の
交渉が必要です。

このようなことを踏まえると、複数の事業を有する企業の場合、出願時に事業毎に権利を取得するようにしたり、権利化の途中(出願段階)において、分割出願等で事業単位(製品単位)の出願にし、同一発明にならない権利を取得したりしておいても良いかもしれません。


ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村